物理分野の特徴と引っ掛かりポイント【動画解説】


中学受験理科/物理分野
単位・条件整理・計算力アップ

中学受験理科「物理分野」の勉強法──単位ミスと条件整理を乗り越えて得点源にするコツ

てこ・滑車・ばね・電気回路・光・音……と、計算を伴う問題が多い物理分野
「公式を暗記するだけ」「物理も暗記科目」と思い込んでしまうと、なかなか点数が伸びません。

本記事では、講師・高野のインタビューをもとに、物理で引っ掛かりやすいポイントと、
暗記に偏らず計算力と理解を伸ばす勉強法を整理しました。
「単位でよくミスする」「てこ・滑車になると混乱する」「電気を丸暗記している」──そんなお子さまに、具体的な突破口を提示していきます。

※動画では、物理分野のつまずきやすいポイントや勉強法について、対談形式で詳しく解説しています。

物理で引っ掛かりやすいポイント

共通する落とし穴は「単位」

高野:理科には物理・化学・生物・地学の4ジャンルがあって範囲が広いんですけど、どこでも言えるのは単位が一番引っかかりポイントです。
キロ、マイクロ、ナノなど設定して作ってくるような問題もあるので、単位のズレた問題を解くのが大変だと思います。

物理に限らず、理科全体で最も多いミスのひとつが「単位の取り違え」です。
特に物理では、

  • 長さ:m/cm/mm
  • 時間:s(秒)/min(分)
  • 質量:kg/g
  • 電気:A(アンペア)/mA(ミリアンペア) など

の変換が頻繁に出てきます。さらに、キロ(k)・ミリ(m)・マイクロ(μ)・ナノ(n)といった接頭語が絡むと、
「数字はあっているのに単位を誤って不正解」というケースも増えます。

単位ミスを減らすためには、次のような習慣づけが効果的です。

  • 問題文の数字の横に必ず単位を書き込む(例:20 → 20cm)
  • 計算を始める前に、すべて同じ単位にそろえる(cm → m、min → sなど)
  • 式の途中で「×100」「÷1000」などの換算を省略せずに書く
  • 答えが出たら、「この値は現実的か?」を軽く感覚チェックする

「物理=数学」──てこ・天秤・滑車の本質

高野:物理で言うと、てこ・天秤系の問題もあるんですけど、ほとんど算数と一緒です。
物理=数学って中高生たちにも言っていますが、天秤の問題は基本的な問題ができる子が多いと思うんですよ。
だけど、一杯滑車がついてきたり、荷物が一杯重なったり条件が乗っかってくると、複雑になって心が折れることが多くなるので…

てこ・天秤・滑車・ばねなどの単元は、一見「物理らしい」内容に見えますが、
実は根っこは算数の比・比例・逆比例です。
基本問題レベルであれば、

  • 力のモーメント(力×腕の長さ)
  • 力の釣り合い
  • 仕事(力×移動距離)

など、一定のパターンを押さえれば十分対応できます。

ところが、入試レベルになると、

  • 滑車がいくつも連なっている
  • 重りが複数個、あちこちにぶら下がっている
  • 問題文の条件が長く、図も複雑

といった見た目の複雑さが加わり、「もう無理」と心が折れやすくなります。

そこで重要なのが、「1個1個紐解いていく」習慣です。
難しそうな問題に出会ったら、いきなり全部を理解しようとせず、
①図を単純な形に分ける → ②1パーツずつ釣り合いを考える → ③最後に全体をまとめる
と段階を踏んで整理していくことが大切です。

「条件をいっぱい」の引っかけに負けないために

高野:ましてや条件をいっぱい入れることによって忘れさせたりする問題もあるので問題の条件を読み取れば引っ掛かりにくいと思います。

入試問題では、わざと条件を多めに書き並べることで、
受験生に「どれが本当に必要な情報なのか」を見極めさせる問題も出ます。

条件の多い問題で混乱しないためには、次のような読み方を習慣にしましょう。

  1. 問題文を一度通して読み、数値や条件に下線を引く
  2. 図の周りに、条件を自分の言葉でメモする(「ここは動かない支点」「この滑車は固定」など)
  3. 「この条件は何のために書かれているか?」を考え、今解いている小問に必要かどうかを判断する
  4. 必要ない条件には、うすく「×」や「今は使わない」などの印をつけておく

「条件を全部覚えておこう」としないことがポイントです。
むしろ、「使う条件」と「今は使わない条件」を分けることで、頭の中をスッキリ整理できるようになります。

引っかかりポイント 典型的なケース 対策のヒント
単位 mとcm、kgとg、minとsなどの換算を忘れて誤答。
  • 数字の横に必ず単位を書き込む
  • 計算前に単位をそろえる
  • 式の中にも単位を書いて、消える単位を意識する
複雑な図 滑車や重りがたくさんあり、どこから手をつけて良いか分からない。
  • まずシンプルな部分だけを取り出す
  • パーツごとに力や釣り合いを考える
  • 最後にパーツをつなぎ合わせて全体像を把握する
条件の多さ 条件文が長く、「どれが必要なのか不明」のまま計算に入ってしまう。
  • 条件を図に書き込んで整理する
  • 小問ごとに必要な条件だけを拾い直す
  • 「今は使わない条件」に印をつけて頭から追い出す

「物理は暗記科目」だと思っていませんか?

暗記だけに頼ってしまう背景

高野:興味を持てなかったら自分から面白いと思ってやってる子は暗記しようと思ってないというかコツのつかみ方や本質の見抜き方が上手いですけど、急遽受験しろみたいに言われたタイプは一問一答形式でインプットさせてる塾が悪いわけでもないと思うんですけど、学校でもこうだよなんていう言われ方するので暗記に頼る子は多く見えますね。

物理は本来、「なぜそうなるか」を考える教科です。
しかし、受験までの時間が限られていたり、興味を持つきっかけが少なかったりすると、
どうしても「公式を丸暗記」「パターンだけ覚える」学習に流れやすくなります。

学校や塾の指導でも、一問一答形式や「こう当てはめれば解ける」というマニュアル的な教え方が行われることも多く、
それ自体が悪いわけではありませんが、

  • 「なぜこの式を使うのか?」
  • 「この式はどんな状況で成り立つのか?」

といった本質的な部分が抜け落ちてしまうと、少し条件が変わっただけで対応できなくなってしまいます。

特に「電気」で暗記に走りやすい理由

――特に電気とか多くないですか?

高野:分からない子からすると覚えてマニュアル化していくのがいいという子ももちろんいるんですよ。塾の先生もその子の特性に合わせてうまく喋らないと、意味が分からないって言う子にはこれはこう当てはめれば解けるよっていう成功体験を与えていけば、やっていくうちに段々わかってくるので生徒のタイプ別によるかなと思います。

電気の単元は、「抵抗が並列のときは…」「直列のときは…」とルールが多く見えるため、
「とりあえず暗記で」という発想になりがちです。

しかし、高野は「タイプに合わせた指導」の重要性を強調しています。

  • 意味から入ると理解しやすい子:
    なぜ電流が分かれるのか、なぜ電圧が同じになるのかなど、イメージや図解を重視
  • まずは形から覚えたい子:
    「この形の回路ならこう計算する」というマニュアルからスタートし、成功体験を重ねる

大事なのは、最初から完璧な理解を目指しすぎないことです。
「やり方はまだよく分からないけれど、ひとまず解けた」という経験も、
後から理解を深めていくための大事な足がかりになります。

物理の勉強で意識したいポイント

インプットより「アウトプット」を増やす

高野:物理で言えるのは、演習量を上げることです。暗記も知識として覚えなきゃいけないことも多いですが、とにかく計算力が必要となってくるので、インプット以上にアウトプットの方を多くしていくのが物理で大事なポイントだと思います。

物理は、「読んで分かったつもり」になりやすい教科です。
解説を読んだときには理解できた気がしても、自分で最初から式を立てて解こうとすると手が止まる──これは演習量不足の典型的なサインです。

物理で力をつけるには、次のようなアウトプット中心の学習が不可欠です。

  1. まずは基本問題・基本例題を繰り返し解く(同じ問題を解き直すのもOK)
  2. その単元の代表的なパターンを自分でまとめノートに整理する
  3. 少しレベルの高い問題に挑戦し、どのパターンを組み合わせれば良いか考えてみる
  4. 間違えた問題は、答えだけでなく「次に同じタイプが出たときの一手目」を言葉で書いておく

こうしたサイクルを回すことで、計算力+パターン認識力が養われます。
物理は「読んで覚える」だけでなく、「手を動かして身につける」教科だと意識しておきましょう。

物理分野で意識したい3つの視点
  • 単位の扱いに慣れる(変換を丁寧に)
  • 条件整理で図と情報をスッキリさせる
  • 演習量を増やして計算力を鍛える

この3つを意識するだけでも、「公式暗記だけ」の物理から、

「自分で考えて解ける」物理へと一歩ずつ近づいていきます。

家庭学習でできる工夫
  • 単位変換だけを集中的に練習する時間を作る
  • 複雑な問題は、自分の手で図を描き直す
  • 同じ単元の問題を数を絞って反復し、「型」を体に覚えさせる

「たくさんの問題を広く浅く」よりも、

代表的なパターンを深く何度も解く方が効果的です。

「物理になると急に点が落ちる…」と感じているご家庭へ

当塾「しゅん吉クエスト」では、物理分野を含む中学受験理科について、一人ひとりのつまずき方に合わせた個別指導を行っています。
「単位ミスが多い」「てこや滑車の図を見るだけで手が止まる」「電気は完全に暗記頼み」といった状態から、
少しずつ「自分で考えて解ける」状態へ近づけていくことを目標にしています。

授業では、例えば次のような点を重視しています。

  • 単位・条件を整理するノートの書き方・図の描き方の指導
  • 代表的なパターンを押さえた演習プランづくり
  • お子さまのタイプに合わせた「意味から入る」/「やり方から入る」アプローチ

「物理だけ何となくモヤモヤしている」「どこからテコ入れすべきか分からない」という場合は、

まず現在地の整理と学習方針の確認から一緒に始めてみましょう。


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まとめ──「物理=数学」と捉えて計算力と条件整理で戦う

物理分野は、「暗記すれば何とかなる」というよりも、計算力・条件整理力・理解力が問われる分野です。
しかし、その分パターンをつかめば一気に得点源になりやすいという大きな魅力もあります。

  • 理科4分野に共通して、特に物理では単位の扱いが最大の引っかかりポイント
  • てこ・滑車・天秤などは、本質的には算数(比・比例)の応用である
  • 条件の多い問題では、「使う条件」と「今は使わない条件」を分けて整理することが重要
  • 物理を暗記科目にしてしまうのではなく、タイプに合わせて成功体験を積み重ねることで理解を深めていく
  • インプットよりもアウトプット(演習量)を増やすことで、計算力とパターン認識力が身につく

まずは、単位・条件整理・基本パターンの反復という3つの柱を意識して学習を進めてみてください。

動画・テキスト・個別指導をうまく組み合わせれば、物理は決して「センスがある人だけの教科」ではありません。
一問一問の積み重ねで、「苦手だと思っていた物理が、気づけば得点源になっていた」という状態を一緒に目指していきましょう。

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